(2004) RIE FUの一枚目のアルバム。 ややいなたい感じの郷愁に想いを馳せられるこの作品は誤解を恐れずに言えば、カーペンターズを思い起こさせるヴィンテージ感と、肌理細やかで暖かみのある音群で構成されている。 まるで雨露のついた収穫したての葡萄を味わっている気分を錯覚し、芳醇な薫りがありありと鼻腔に漂うようだ。 節々に一つ一つ些細だが、えてして主張しない上質な雑音達がちりばめられており、大事に手入れされた歴史ある調度品が取り揃えられた部屋に、吹き込んだ一陣の風のようにメロウな快感を齎してくれる。 Decayの歌詞には人生を急く焦りを感じるが、旅に出る子を送り出し見守るようなポジティブで柔らかな曲調のおかげで不思議と無理に堰きたてられるかのようなストレスは感じない。 本当に豊かな気持ちになるとはこういうことなのだろう。背筋が気持ちよく美しく伸びる一枚。 Best tracks:decay、笑って恵みのもとへ、Life is like a boat [youtube]https://www.youtube.com/watch?v=j29GbD8ACtE&feature=kp[/youtube]
(2002) 湯川潮音の2nd album。 生楽器を生かしたコケティッシュで有機的な構成で作られており、湯川潮音自身のふわっとしてぼんやりとした特徴的な声もあいまって、一度耳にすればずっと長く耳に残る。 全編スロウでせわしいチューンがひとつもなく、眠くなるような生温い日差しを浴びているようなゆるやかな温度を感じ、森ガールとでも呼びたくなる。 そこには誰かをむやみに傷つける意図など見えない。ただ淡々と世界の豊かさと賜られたものに感謝を歌いあげられる無害な楽園である。 明るいテラスでお茶と本を用意してゆっくり聴いてほしいラウンジミュージック。豊穣で贅沢なひと時を味わうのなら是非この一枚。 Best tracks:渡り鳥のトラッド、緑のアーチ、蝋燭を灯して [youtube]https://www.youtube.com/watch?v=Gof9Xd51FRU[/youtube] 彼女の深夜高速のカバーもまたすばらしく、夜の帳が下りた頃に聴きたい。 [youtube]https://www.youtube.com/watch?v=dK8wm_VGaWo[/youtube]
(2004) 寡作ながら何篇かのささやかな物語を我々に贈り届け続けてくれる新居昭乃の2004年のアルバム。 清涼感ある快く落ち着いたビートで導きを告げるこの作品は元々彼女に宿る音楽性、 センスオブワンダーとでもなぞらえられるすぐ近い未来を臨む「これからなにがあるんだろう?」という胸が躍る期待感や、不思議を追い求める幼くみずみずしい探求心、さらに退廃感と背筋がわななくひそやかな恐怖をともなう訓示を与える童話的な空気に満ちている。 全編にわたりスロウリーなテンポだが、低カロリーで健康的でボリュームをあまり感じさせることなく聴き疲れすることもないだろう。 個人的には日本におけるロリータウィスパーボイスの第一人者でパイオニアだと思うのだけれど、認知度は一層低くこの才能がアニメに一番マッチするとはいえ(本人の作家性もあるが)、活躍できる他の場が日本にそう多くないというのが惜しい。 と思ったら、ここ数年は台湾、フランスなど国内外でライブで活躍中らしくそんな心配は無用のようだ。ネット様様ですね。 過去の公式HPの日記でRadioheadのトム・ヨークが好きだと発言していたようで(彼女のほうがずっと先輩ですが)さもありなん。 Best track:虹色の惑星、夜気、パンジー [youtube]https://www.youtube.com/watch?v=PFf3krlGzAA[/youtube]