(1992) ジョン・マルム・ジュニアと共同して立ち上げたNIN INCH NAILSのフロントマン、トレント・レズナーのプライベートレーベルをNothing Records設立を祝する一枚目。 EP扱いではあるのだが、実質NINのディスコグラフィーを代表するアルバム並みのインパクトを与えたマテリアル。 全体の印象はポップな前作と一変して、冷ややかなムードと激烈で猛攻一辺倒なメタリックなリフで高まる感情をぶつけた作風となっている。 NIN全体で根底のダークなテーマは一貫はしているのだが、この一枚だけで言えば攻撃的なノリは他のアルバムと対比し、別格のものとなっている。ジャケットはNINの他のジャケットではあまり見ることのない真っ赤な燃え盛る炎で覆われているが、何もかもを縦横無尽に焼け焦がすエネルギーはともかく、クールであれどホットなイメージはあまりない。 これ以降でメタル方面に大きく舵を振らなかったのはトレント彼自身が元々の多様な音楽性、パンクやプログレッシブロック、エレクトロニックなどのバンドがバックグラウンドにあったからであろう。 一応、インダストリアルメタルの範疇である曲は他のアルバムでないこともないし、過去に1993年と1996年にはグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマーに選ばれてはいるが、このアルバム自体を除いて細かいことをうるさく言えば、彼自身はインダストリアルロックというアイコンが相応しい。 なお、カバー曲はAdam and the Antsの楽曲、Physical (You’re So) と当バンドのトレント・レズナーも参加のPigfaceの楽曲Suckとなっており、オリジナルに引けを取らないアレンジとなっている。またPVでコーラスとして参加しているデビュー前の若いマリリン・マンソンの姿も見ることができるGave Upも必見。 Best track:Wish、Last、Gave Up
(2006) このアルバムに一貫して身体の深奥を揺さぶるのは感傷で充満した衝動とアグレッシヴな怨憎に有り余る慟哭である。 鋭利な匕首で乱暴にえぐるような刃傷による叫びと、雑に落っことしていったペシミスティックな過去への憐憫達が後を追うようにして、マグマのごとく噴出する。 胸に詰まるような怒りとも泣きとも見分けがつかぬ、あるいはそのすべてが入り混ざった感情が零れるようにボロボロと荒ぶるソリッドなリフが流れ出し、Reroute to Remainから大々的にモダンな変化をした経過から今作で完成形として到達した、第二部オルタナティブメタル期の、彼らのディスコグラフィーでも最も大胆で野心に満ちた作品である。 全編にわたり穿たれる突き刺さるような豪雨のようなリフの中でも力強い鼓動を魅せる「Take This Life」、「Dead End」のLisa Miskovskyによる美しき歌唱とIn Flamesのエッジィなリフのコラボレーションもまた嘆きのメロディと悲劇的で冷酷無比なコントラストを彩っている。 強靭な音の嵐の間に配置されたバラードの「Come Clarity」は、アルバムに共通した鎮痛な重々しさはあれど、むせ返るような攻撃力はない。あふれ切りそうな棄民感と悲愴をカップいっぱいに湛えていて今にも呻きが染み出しそうな重要な曲だ。 このアルバムでIn Flamesはオルタナティヴメタルへの進化を決定的に位置付けたといえ、新生In Flamesとして新しい趣にいささか不得手を示す古参な保守派もそのでき映えに驚愕したのではないだろうか。 ザクザクとしたスラッシュメタルを好む御仁にも刺さり、全盛期のメンバーが揃った時期のメロディックデスメタルとオルタナティブメタルを体験する皮切りになるドラスティックな一枚。 また、ジャケットも自身は当バンドのアートワークの中ではクールでシンプルで一番お気に入りである。 Best track:Take This Life、Dead End、Come Clarity
(2009) 元Static-X(このアルバム出した頃は現役)の日本人ギタリスト、コーイチ・フクダ氏が参加したバンド。 メンバーはDaniel Brecher(ダニエル・ブレッチャー) Aviv Cohen(アヴィブ・コーヘン) Ryan Collier(ライアン・コリラー) Koichi Fukuda(コーイチ・フクダ)の四人でロサンゼルスで結成した。 Ambipulsive Rockと言う造語?のジャンルを名乗っている模様。 地を舐めり、底をなぞる様な重低音がきいたスタンダードでグルーヴィな純米国産オルタナティブヘヴィロック。 全体的に過剰なまでと言えるほどのスピードのある曲は多くはないが、(Bulletは結構早い)曲目の大半がキャッチーで美しいメロディセンスに富み、時に優しくささやくような父性あふれるボーカルが耳障り良い。 ほとんどの曲がバラード的な感じで、ニッケルバックやフーファイターズが好きな人ならお勧めでき、ヘヴィミュージック初心者でもすんなりと全部聴けてしまうのでは。 ヘヴィミュージック入門推薦盤。 Best track:Hangman、You Got The Ball オフィシャルから1stアルバム「What’s Born in the Basement」全曲ダウンロード可能。 https://www.drugstorefanatics.com/