IMPIOUS – Hellucinate

(2004)

のべつまくなしに鋭利に耳をつんざくこのアルバムはスウェーデンのハイスピードキラーマシンIMPIOUSが
無辜のリスナー達に嗾けた4枚目。
最初から始まり最後の鐘の音に終わるまで、加減なしに全てを切り裂くブラックな破壊力に満ちており、
逃げ惑うものも、立ち竦んでいる者も誰もいとわず、飢えた獣が襲い掛かる。
メロディもメロデスというほどではないが、過剰にメロディアス過ぎずブルータルさを殺さないほどよい按配で打ちこめられている。
ほぼ3分台のスラッシーな曲がほとんどであり、ラストトラックのみ9分の台詞つきのナンバーがある。
Best tracks: wicked saint
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=6xbTgZQRNDY&feature=kp[/youtube]

RIE FU-RIE FU

(2004)

RIE FUの一枚目のアルバム。
ややいなたい感じの郷愁に想いを馳せられるこの作品は誤解を恐れずに言えば、カーペンターズを思い起こさせるヴィンテージ感と、肌理細やかで暖かみのある音群で構成されている。
まるで雨露のついた収穫したての葡萄を味わっている気分を錯覚し、芳醇な薫りがありありと鼻腔に漂うようだ。
節々に一つ一つ些細だが、えてして主張しない上質な雑音達がちりばめられており、大事に手入れされた歴史ある調度品が取り揃えられた部屋に、吹き込んだ一陣の風のようにメロウな快感を齎してくれる。
Decayの歌詞には人生を急く焦りを感じるが、旅に出る子を送り出し見守るようなポジティブで柔らかな曲調のおかげで不思議と無理に堰きたてられるかのようなストレスは感じない。
本当に豊かな気持ちになるとはこういうことなのだろう。背筋が気持ちよく美しく伸びる一枚。
Best tracks:decay、笑って恵みのもとへ、Life is like a boat
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=j29GbD8ACtE&feature=kp[/youtube]

HYDE-666

(2003)

HYDEのソロアルバム二作目。前作とは異なり90年代のヘヴィロック、ポストグランジ、メロディックパンクなどを通過した音作りがされており、hydeのハードロック志向を反映させた形となっている。
Larc-en-cielでもhydeが作曲したのは元々ハードロックなものが見られたので、そういう意味で言えばラルクの中では80年代のメタルにもっとも意識を根ざしているのが彼なのだろう。
軽く湿った色めきたつグラマラスな歌唱とカラッとさせた乾いたノイジーなギターが同居しており、メロディックで明快なトーンのHello、刺激的でハイなナンバーのMidnight celebration、陰と陽、両面取り揃えられてあり、視聴者を飽きさせない。
もっともhydeは曲を多く作るのは不手としており、このアルバム製作に当たって10曲作るのも苦労したということで、これ以降編曲にとどまっていたKAZが次作では作曲面で携わっており、後に共にVAMPSを結成している。
KAZの作曲する曲もバラエティに富んだユニークな曲が多く、今後ともに期待できるパートナーである。
Best track:Hello、Midnight celebration
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=MlsfE6MZCp8[/youtube]

aiko-夏服

(2001)

aikoの三枚目のアルバム。
彼女を彼女たらしめているのはそののびやかな明るさと純真、素直さというパーソナリティであろう。
容貌よりも内から発するとびっきりの天真爛漫さを外に注げば何者にも負けない無敵のかわいいさを生み出せることを彼女は世界に示してみせた。
その魅力を熟れ余し、芳しいまでの芳香を放つような、やや微熱を帯びた気だるげで甘い歌い方は
今恋をしている10代の少女達だけではなく、かつて恋を経験した大人達も引き寄せる引力を持っている。
こういったバラードを発表した当時だけ作用するのではなく、加齢を重ねればこそ様になってくるように創造したのは彼女最大の発明であり、時間をかけてずっと味わっていける賞味期間の永いアンセムだ。
島田昌典の程よい加減のやり過ぎないジャジーなアレンジもまた温度に拍車をかける。
初夏から秋の始まりにかけて、また着込むまでの衣替えがやってくるその時期まで、風邪にうなされたようなぼーっとした気分にまた罹ってみたい、そんな記憶を紡ぐためにこの「夏服」を卸してみましょう。
Best tracks:ロージー、紙飛行機、密かなさよならの仕方、初恋、終わらない日々
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=H-3Igr7Yx-A[/youtube]

BLOOD STAIN CHILD-IDOLATOR

(2005)

日本産メロディックデスメタル三枚目。
RYOがメインヴォーカルを専任しているのはこれが最後、以降はヴォーカルが安定せず変遷してゆく時期を迎える。
前作から電子音導入、今作で頭角を現し、次作で名を上げることになる、言わばBSCの歴史の中間地点にある重要な作品。
ジャケットの印象が左右している部分もあるだろうが、ダークなディストピア感が強めで、澄んだ電子の海を心地よく突き抜けていく開放感は次作の方が強めで本作は若干滞り気味でさえある。
それはどこが模索していた部分もあったせいなのかもしれない。個人的にはこの程度のほんのり陰が刺す派手すぎない電子音とメタルのバランスがちょうどいい塩梅である。
Best tracks:TRUTH
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=-gVvKI3ptCE[/youtube]

湯川潮音-湯川潮音

(2002)

湯川潮音の2nd album。
生楽器を生かしたコケティッシュで有機的な構成で作られており、湯川潮音自身のふわっとしてぼんやりとした特徴的な声もあいまって、一度耳にすればずっと長く耳に残る。
全編スロウでせわしいチューンがひとつもなく、眠くなるような生温い日差しを浴びているようなゆるやかな温度を感じ、森ガールとでも呼びたくなる。
そこには誰かをむやみに傷つける意図など見えない。ただ淡々と世界の豊かさと賜られたものに感謝を歌いあげられる無害な楽園である。
明るいテラスでお茶と本を用意してゆっくり聴いてほしいラウンジミュージック。豊穣で贅沢なひと時を味わうのなら是非この一枚。
Best tracks:渡り鳥のトラッド、緑のアーチ、蝋燭を灯して
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=Gof9Xd51FRU[/youtube]
彼女の深夜高速のカバーもまたすばらしく、夜の帳が下りた頃に聴きたい。
[youtube]https://www.youtube.com/watch?v=dK8wm_VGaWo[/youtube]

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